京都市左京区にある貴船神社は、全国に500社を数える貴船神社の総本宮で、神社の中心である本宮に祭られているのは高龗神(たかおかみのかみ)という水の神様。本宮前には神様が司る水がこんこんと湧き出ています。貴船神社が呪いで有名となった理由や、貴船神社がどのような神社なのかについてひも解いていきましょう!
地名と川は「きぶね」、神社は「きふね」と違い呼び方をされていることは、下記リンク先で説明しています!
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貴船神社の呪い起源とは?
貴船神社には、丑の年丑の月、丑の日の丑の刻(午前1時から午前3時頃)に参拝して願いを掛ける、心願成就の伝承がありました。しかしなぜこれが丑の刻参りという呪いの儀式となってしまったのでしょうか?
平家物語の中の「剣巻」や、謡曲や能の演目になっている「鉄輪」というお話があります。これは嫉妬に狂った女性が鬼になり夫を呪うというお話で、これが貴船神社の呪いの由来となっているようです。なお、嫉妬に狂った女性は、鬼となり男性を殺そうとしたところ、安倍晴明が呼び出した神々に責められ鬼は退散するというのが、「鉄輪」のストーリのようです。
どうやら今のSNSの役割を、平家物語、謡曲や能が果たしたようです。その話が現在まで続いているところがすごいですよね。
丑の刻参りは現在でも・・・
丑の刻参りという呪いの儀式は、7日間、深夜1時から3時に神社の境内で藁人形を五寸釘で打ちつける呪いの儀式で、人に見られると効果がなくなり、呪いが自分に返ってくるとされているそうです。
貴船神社の閉門時間は、時期により異なりますが18:00から20:00ですので、丑の刻参りはできません。
現在でも貴船神社の境内で丑の刻参りの跡が見つかるということがあるそうです。その場合は、速やかに藁人形は処分されますが、木自体にも負の気が宿ってしまってしまうため、そのような木はご神木として扱わないといけないけません。
ブッタの「怒りで誰かを懲らしめてはいけません。最後には必ず、その怒りにあなたが罰せられることになります。」というお言葉もありますし、やめましょう。
そしてスペインのことわざに、「優雅に生きることが最良の復讐である」というものがあります。日本人も優雅に生きましょう!
貴船神社の呪いの起源は、橋姫伝説?
呪いの儀式、丑の刻参りの原型となったのが、宇治の橋姫神社に祀られている“橋姫”だという橋姫伝説というのもあります。
嵯峨天皇の時代ある公卿の娘(橋姫)が嫉妬に囚われ貴船神社に7日間こもり、貴船大明神に「殺したい女がいるから鬼神に変えてほしい」と祈ったところ、哀れに思った貴船大明神は鬼になりたければ、姿を変えて宇治川に21日間浸かるよう言いました。そして鬼になった橋姫は妬んでいた女や親族などを殺したのちに、無差別に人を殺すようになりました。源頼光の家臣である源綱(みなもとのつな)がこの噂を聞きつけ眼鬚刀(ひげきり)を持って見回りをしていたところ、一条堀川の戻橋で女性が歩いているところを見かけ「夜道は危ないですから、送りましょう」と、女性を馬に乗せましたが、この女が実は橋姫なのでした。源綱(みなもとのつな)が橋姫の腕を切り落とし、陰陽師の安倍晴明が腕を封印したというお話もあるようです。
橋姫伝説は諸説あり、別バージョンを下記リンク先でご紹介しています。
嫉妬深い彼女は現在でも宇治橋を渡るカップルを別れさせるというジンクスまで残しています。橋姫にも、スペインのことわざを教えてあげたい!
貴船神社の奥宮と本殿にまつわる伝説とは?
貴船神社に秘められたパワーを感じられる場所が奥宮です。杉の木立に囲まれた参道の先の朱色の門をくぐった先に奥宮があります。ここが貴船神社の始まりの場所といわれています。
連理の杉
この朱色の門のすぐ横の大きな木が、連理の杉です。連理とは、別々の木がくっついて一つになること。仲睦まじい男女を表し、縁結びのご利益があるといわれています。貴船神社の連理の杉は杉と楓が一つになっていますが、杉と楓が一つになるのはとても稀なことなのだそう。稀であることを知ってしまうと、また参拝しに行きたくなってしまいます。
御船形石(ふながたいし)
約1600年前に初代神武天皇の皇母である玉依姫が、現在の大阪湾から船に乗り、淀川、鴨川、貴船川を遡り、水源の地として現在の奥宮がある場所にたどりつきました。清水の湧き出る霊境吹井(れいきょうふきい)見つけた玉依姫が、ここに祠を建てたのが、貴船神社の起源と伝えられています。このとき乗ってきた船が奥宮の手前にある御船形石の中に隠されていると伝わっています。また、乗ってきた船が黄色い船であったため、黄船(きふね)の宮と名付けられたという説もあるそうです。
奥宮本殿にまつわる伝説
本殿の地下には、龍穴(りゅうけつ)と呼ばれる大きな深い井戸があり、貴船龍穴とも呼ばれています。龍穴とは大地の気が噴き出す場所のことです。江戸時代に本殿を修理していた大工が道具のノミを龍穴に落としてしまいましたが、龍穴から吹き出る不思議な力で、ノミが空高く舞い上がったという伝説があります。私はこれを聞いたとき、イソップ寓話の「金の斧」を思いだしていまいましたが、特に「金のノミ」という伝説はなさそうです・・・
とにかく貴船神社の奥宮本殿の龍穴、そこは水と大地のパワーが噴き出している聖域なのです。
貴船神社はなぜパワースポットになったのか?
木は水がある場所に育ち、元気な木は“しめ縄”をしてご神木になっています。水がきれいなところに大きな気ができ、ご神木ができて、そのご神木が目印になって聖地になることが多いようです。かつて貴船は漢字で気生根(気の生ずる根源)、木生根と書かれていました。貴船、鞍馬は木の生育が早く、良い木が育つ場所ですので、貴船はその典型的な場所なのですね。
古来より日本人は木々が生い茂る場所に畏敬の念を抱きますが、ペルーのインカ文明など他の文化も自然を神と崇めるので、世界のパワースポットと呼ばれる多くの場所は自然あふれる場所にあるにある可能性がありますね。
貴船神社はなぜ絵馬発祥の地となったのか?
貴船神社には高龗神という水の供給を司る神様が祀られており、かつて天皇が貴船神社で雨ごいをするときは黒馬を、霖雨(ながあめ)のときは白馬または赤馬をと、それぞれ生きた馬を奉納していたそうです。しかし,お祈りのたびに馬を用意するのは大変なため、生きた馬の代わりに、馬の絵を描いた板を奉納したのが絵馬の始まりといわれています。神社も奉納された馬を管理するのが大変だったと聞きますので、これは三方よしならぬ、二方よしでwin-winの関係だったと想像します。
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