暗号資産(仮想通貨)とは?ブロックチェーン、マイニング、NFTをわかりやすく解説!再生可能エネルギーとの関係とは?

暗号資産とは仮想通貨とも呼ばれ、インターネット上でデジタルのお金として使われています。暗号資産は銀行やクレジットカード会社などが担っていた金融の仕組みを変えるものです。エルサルバドルなど法定通貨として採用した国もあり日常の支払いに使われる例もあります。現在存在する暗号資産は3000以上で、時価総額は合計3000兆円に上るといわれています。この無視できない市場規模になっている一方で暗号資産は投機の対象となり、その価値は目まぐるしく乱高下し、仮想通貨詐欺、違法な暗号資産の売買などの新たな問題も起きています。そして現在3000以上ある暗号資産の9割以上は消えていくとも言われています。それでも暗号資産の可能性に多くの人が注目し、金融とは関係のない様々な分野で使われています。暗号資産を支える技術を使い新しいビジネスや文化が生まれています。暗号資産にとって重要な技術をもたらしたのはビットコインですが、その誕生は謎に包まれています。誰が発明したのかわかっていないのです。暗号資産はどのように生まれ、どのような未未来へと導くのか?暗号資産は広く普及しましたが、本来の目的は見失われています。


お金とは?

暗号資産とは仮想通貨とも呼ばれ、インターネット上でデジタル通貨として使用され、いわば新しいお金のカタチです。では従来のお金と何が異なるのでしょうか?まずお金は人類の歴史で長い間価値の交換手段として使われ、貝殻、金属の板、石板など多様な貨幣がありました。社会が合意すればどんなものでもお金になるのです。

お金は、1)大勢の人がお金には価値があると思っていることが必要で、さらに2)将来もその価値があり続けると合意していなければ成り立ちません。そしてお金が機能するには条件があり、1)簡単に取引ができ、2)持ち運びが可能で,3)価値が大きく変動せず、そして4)将来も価値があるという信用が不可欠です。

お金はそもそもが仮想的なものであり、経済活動を可能にするツールなのです。その価値を信じる人が一定数いれば何でもお金になるのです。


お金と暗号資産の歴史とは?

貨幣(米国)

アメリカでは建国以来様々な貨幣が使われてきました。特定の場所だけで利用できる地域通貨です。アメリカ合衆国では1792年憲法で連邦政府が貨幣をつくる権利を与えました。しかしつくり方は明記されず各州の政府は、銀行や企業が自由に貨幣を発行できるという取り決めをしてしまいます。その結果、8000もの銀行や企業が独自の貨幣を発行しますが、貨幣の信用を与える組織は存在しませんでした。混沌とした状況だったのです。

暗号資産

現在の暗号資産は当時のアメリカと同じように乱立しています。その価値は国家や銀行によって保証されているわけではありません。評価は市場に委ねられ、相場によって価値が大きく変動してしまいます。それでも暗号資産には多くのメリットがあると考えられています。現在、日常の取引は電子的に処理されていますが、暗号資産の仕組みはそれとは異なります。クレジットカードなどを使った電子決済では、すべて仲介役は通じて取引を行っています。銀行やカード会社に委託して、口座からお金を移動してもらっているのです。ようするに私たちは銀行やカード会社に手数料を払い取引の管理をまかせてきたのです。しかし暗号資産の場合は、こうした仲介者を通すことなく個人の間で自由に取引ができるのです(第三者に管理されない決済システム)。

暗号資産の誕生には、重要な2つの発明を待たなければなりませんでした、暗号化とブロックチェーンです。


暗号化

1970年代後半マーク・ミラー(コンピューター科学者)はイエール大学でコンピューターサイエンスを研究していました。彼のグループはコンピューターとIT技術の進歩が社会をつくりかえる可能性があると考えていました。政府の干渉かれ逃れ新しい自由な世界を作ることを目指していたのです。国家による支配を逃れ自由を実現する、彼らはその分岐にいると考えていました。彼らは全体主義的な未来に恐怖を感じていました。抑圧ではなく、自由をもたらすシステムを作るのが自分たちの責任だと考えていました。そのころ最初のネットワーク型コンピューターがアメリカの大学で研究されていました。軍事用の通信技術として開発されていたこのネットワークは、その後インターネットの基礎となりました。この発明がコミュニケーションのカタチを一変させることは明らかでした。一方ネットワークを政府が監視すればプライバシーが侵害されるという指摘もありました。そこで科学者たちが取り組んだのが、安全な通信を可能とする暗号システムの開発です。暗号には何千年もの歴史がありますが、厄介な問題があるのです。それはどんな暗号も一つの鍵で暗号化と解読の両方を行うということです。それを解決したのが1970年代の科学者たちです。1977年マサチューセッツ工科大学の研究者たちが斬新なアイデアを生み出します。それは全く新しい暗号技術で、公開鍵暗号と呼ばれるものです。このシステムに必要な鍵は1つではなく、2つです。まず情報を受け取る受信者(recipient)が2つの鍵をつくります。1つ目は暗号化のための公開鍵(Public)、2つ目は暗号を解読する秘密鍵(Private)です。受信者は公開鍵のみを送信者(sender)に渡し秘密鍵は自分だけが保持します。公開鍵を受け取った送信者は、この鍵を使って情報を暗号化し、暗号を受信者に渡します。この暗号は秘密鍵を使うことで初めて解読が可能になります。つまり、受信者以外だれも解読できないのです。2つの鍵は数学的に関連づけられており、秘密鍵から公開鍵をつくることは容易ですが、逆に公開鍵から秘密鍵を推測するのはほぼ不可能です。素数を掛け合わせて答えを出すのは簡単ですが、その答えから元の素数(素因数)を導きだすのは大変な計算になります。この暗号解読には当時のスーパーコンピューターでも、何千年という時間が必要だったはずです。


この発明は科学雑誌で紹介されたものの、論文の詳細は紹介されませんでした。国家安全保障局(NSA)は、科学者たちに論文を公表すれば刑務所に入る可能性があると伝えていたのです。アメリカ政府は暗号技術を現代兵器とみなし国外流出を恐れていました。そのとき活躍したのが、マーク・ミラーです。彼は論文の重要性に気付きこの技術が国家機密となる前に公開しようと考えたのです。この技術の発明はより良い未来をもたらすと確信したからです。マーク・ミラーは研究を行っていた大学に潜りこみ論文をコピーし、あらゆるコンピューター雑誌や信頼できる友人たちに送りました。プログラマーたちはあらゆる場所に暗号化のコードを書き込み、瞬く間に広がっていきました。


ブロックチェーン

1990年代この暗号技術を使い社会変革を起こそうとする人々、プログラマー集団サイファーパンクスが現れました。彼らは金融は中央集権的な一部の人々に牛耳られていると主張し、それを変えるための反乱だと主張しました。グループの交流はメーリングリストで行われていました。このとき活発に議論されていたのが、オンライン上で機能する新しい決済システムの構想です。サイファーパンクスが目指したのは、銀行やクレジットカード会社(仲介者)を通した中央集権型の金融システムからの脱却で、仲介者の代わりに通貨を利用するユーザーが全員が管理者となる新しい分散型の金融システムです。

2008年10月31日にサトシ・ナカモトが送信した「ビットコイン:電子通貨システム」というタイトルのメール(8ページの論文)には、世界初となる暗号資産の構想が書かれていました。ビットコインの記述は、近代の人類史上もっとも重要なものといえますが、その考案者は今も名乗りでていません。

この論文は革命的でした。何百もの暗号学者やコンピュータ科学者の研究を見事に統合していました。銀行などの助けを借りることなく、多数のユーザーが自分たちで管理する分散型のオンライン決済システムの仕組みを記していたのです。


ビットコインの取引の仕組みとは?

資金受領者が公開鍵と秘密鍵を作成し、送金者に公開鍵からつくられたアドレスを渡し、送金者はそのアドレスにビットコイン支払いの手続を行います。資金受領者は秘密鍵でアクセスし、その資金(ビットコイン)を受け取るのです。決済の記録はいくつものコンピューターで分散して行われています。この取引の記録は、ユーザー同士で共有され、更新されていきます。いわばユーザー全員が取引のすべてを目撃しているのです。誰もがアクセス可能なビットコインの台帳、このシステムを機能させるためには取引記録の改ざんを防ぐ仕組みが必要です。そこでサトシ・ナカモトが考案したのがブロックチェーンというアイデアでした。


ブロックチェーンの仕組みとは?

ネット上の見知らぬ人を信用することはできません。ブロックチェーンのシステムは取引記が改ざんされていないことを、匿名の参加者たち全員が確認できるように設計されています。ブロックチェーンの取引記録を安全に管理するための仕組みとは…

すべての取引記録は10分ごとにまとめられ一つのブロックに格納し、これに特殊な計算が加えられ短い文字列が出力されます。これをハッシュと呼びます(例:b0ed44)。もし誰かが中身を少しでも変えれば、このハッシュも変わる(例:b0ed44→9bea9)ため、改ざんされたと分かる仕組みです。10分ごとに追加されたブロックは、チェーン上に連なっていきます。新しいブロックは前のブロックと紐づいた形で生成されます。ネットワーク上の他のコンピューターは不正がないことを確認し、新たなブロックを承認していきます。この仕組みによりユーザーたちによって取引記録が管理されるまったく新しい分散型の決済システムが実現します。


なぜ人々はブロックチェーンに参加するのか?

新しいブロックの生成は誰かが行る必要があります。なぜ人々はこのネットワークに参加し、ブロックチェーンをつなげていくのでしょうか?どうすればそれを安全に行えるのでしょうか?

そこでサトシ・ナカモトはインセンティブを用意しました。ブロックを追加した人に報酬としてビットコインを与えることにしたのです。この仕組みはマイニング(採掘)と呼ばれています。ブロックを追加できるのは一度に一人のユーザーだけです。サトシ・ナカモトはそのユーザーを決めるため数式を駆使したパズルを解かせることにしたのです。最も早くパズルを解いたユーザーが次のブロックを追加できる仕組みです。

ブロックを追加するには、計算量の多い暗号を解かなければなりません。多くの時間とエネルギーを費やし解読に成功した人がマイニングを許されます。だれもが簡単に解けるパズルでは意味がないのです。もしも改ざんしようとする人がいても簡単に参入することはできず、その結果ブロックチェーンの安全性は保たれるのです。


ブロックチェーンと再生可能エネルギーの関係とは?

当初イニングは一部のユーザーが自宅で行う小規模なものでした。しかしビットコインの価値が上昇するにつれ、報酬を求めて熾烈な競争が始まりました。やがてビジネスとしてマイニングが行われるようになり、いち早くパズルを解くための大規模なコンピューターが整備され膨大な電力を費やすようになりました。今や世界の総電力のおよそ1%が暗号資産のマイニングに消費されていると言われています。マイニングの3割はアメリカ、なかでもエネルギーの豊富なテキサスで行われています。電力が安いアイスランドやカザフスタンでも盛んですが、中国では禁止になりました。膨大な電力を賄うため、あらゆる発電方法が採用されています。巨大な電力源として水力発電が使われています。太陽光や風力発電も増えつつあります。皮肉なことですが、大量の電力は消費するビットコインが再生可能エネルギーを進める一因になったのは確かです。


暗号資産のテクノロジーをつかった新しいビジネス

ケビン・マッコイとその妻ジェニファーは、2000年代に活躍したデジタル・アーティストです。しかし当時彼らの作品は無許可でコピーされ、インターネット上に出回っていました。デジタル作品は常にコピーが作られ拡散していきます。オリジナルは存在しないのです。

しかし暗号資産の仕組みはケビンに素晴らしいアイデアを授けました。この仕組みによって唯一無二のデジタル作品という考え方が生まれました。デジタル技術は無限に再現可能で、すべてコピーアンドペースとできるという常識が突然当てはまらくなったのです。

2014年、ケビンはアーティストと技術者とが共同で新しいアイデアを生みだすというニューヨークで開催されたイベントに参加しました。そしてケビンとアニール・ダッシュ(起業家)は、ブロックチェーンの技術を応用して、デジタル作品でもたった一つしかないオリジナルであると証明する方法を考えました。2人はこのイベントでブロックチェーン上に映像作品を登録したと発表しました。彼らはそれが唯一無二の作品であると証明しました。ブロックチェーン上に作品の所有者がわかるシステム(秘密鍵を持つ者だけがそれを所有できる)を作ったのです。所有権の履歴を記録できたのです。


その仕組みが新たな世界の扉を開きました。デジタル上のデータが唯一無二であると証明できるようになったのです。この技術はNFT(非代替性トークン)と呼ばれています。

NFTは暗号資産イーサリアムの登場で、注目されることになりました。イーサリアム共同開設者のヴィタリック・ブテリンは、「イーサリアムが提供するのはプラットフォームで、様々なコミュニティーが存在していて、誰もが楽しめる何かがある」と言います。現在イーサリアムは世界最大のブロックチェーンです。ビットコインの10倍以上の取引が行われています。しかしイーサリアムの本当の価値はそのブロックチェーンの特異性にあり、ブロックチェーン上に契約の仕組みが組み込まれていることです。スマート・コントラクトという機能を使用して、契約を自動で行うことができるのです。この新しいアイデアによって音楽の印税契約から、遺言状までほぼすべての契約をブロックチェーン上でかわすことができます。

イーサリアムはブロックチェーン上でデジタル作品を取り扱うというNFTの構想を実現することになりました。その結果NFTとして販売さえるデジタル作品の価格が高騰し、NFTの売上高は現在5兆円を超えています。いまや様々な作品が取引されるNFTアートのそのほとんどがイーサリアムに登録されているのです。NFTアートもまた投機の対象となり有名な競売会社のクリスティーズもNFT市場に参入するようになりました。


当初の目的とは違う方向に進み始めた暗号資産

大企業や大手銀行などが次々と暗号資産に参入し、当初の目的とは違う方向に進み始めています。本来金融機関などにコントロールされない仕組みを目指した暗号資産の開発者たちでしたが、その理想が崩れようとしています。また政府により暗号資産をどう規制するか議論が繰り広げられています。

規制は消費者を守るために必要ですが、しかし自由な競争を維持することは非常に重要です。規制が強まって権力が何者かに集中することは避けなければなりません。

暗号資産は私たちをどのような未来に導いてくれるのでしょうか?


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