天橋立の「股のぞき(またのぞき)」はなぜ行われるのか?そして天橋立の股のぞきはなぜ有名なのか?

日本三景のひとつとして知られる京都府の天橋立は、傘松公園や天橋立ビューランドからの股のぞきが有名です。この股のぞきはなぜ行われるのでしょうか?またいつごろから有名になったのかひも解いていきましょう。

天橋立の「股のぞき」はなぜ行われるのか?

天橋立の方向に背を向けて立ち、腰を股の間から景観を眺めることです。景観を逆さに眺めることで、色彩が鮮やかに見え距離感が不明確になることで平面に見え、大きさが変わり、また直立時の景観と変わり、海が空に見えることから、股のぞきが行われるようです。そして股のぞきで見える風景は、天橋立神話に登場する「天上世界」なのだと言われています。昔の人はそれを見ることで、神気に触れ、運気も上がると感じたようです。このことは下記リンク先の私の記事でご紹介しておました。

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学術的研究

股のぞきを行った場合、天地が逆になるのは当然のことですが、なぜ直立時の景観と異なり、ように見えるのでしょうか。この点について、20年以上前に天橋立の股のぞきの景色に魅了された立命館大学の東山篤規教授や、大阪大学の足立浩平教授などが学術的な研究を行い「股の間から風景をのぞくと小さく見え、遠近感がつかみづらくなる」ということが2006年学術論文で発表され、2016年にイグノーベル賞知覚賞を受賞し、世界に知られるようになりました。

・通常の直立した姿勢の場合と比べ、小さく縮み平らで奥行きが少ないように見えるという錯視の効果が得られることを確認

・前かがみの姿勢も錯視が起こる要因


錯覚の効果を得るためのポイント

東山教授によると、現代人はパソコンやスマートフォンなど刺激の強い光に囲まれており、微妙な色や視界の変化が分かりづらくなっているそうです、そこで錯覚の効果を得るためのポイントをご紹介しましょう。

(1)少なくとも数十メートル遠くの景色を見る

(2)何度か繰り返し見てみる

(3)頭に血が上らない範囲でしばらく動かない


天橋立の「股のぞき」は誰が始めた?

股のぞき発祥の地と言われるのが傘松公園で、1900(明治33)年頃に傘松公園に展望所を設置した吉田皆三によって広められたといわれています。股のぞきは、大正・昭和に天橋立のお土産として販売されていた(1918(大正7)年~1932(昭和7)年に発行された)写真入り絵葉書に多数見られ、天橋立を股のぞきで見ることが定着するきっかけになったと考えられています。


股のぞきは日本の民族風習のひとつだった!

股のぞきは、自身の股の間から顔を出し、逆さまにものを見るしぐさで、股屈み、股眼鏡とも言うわれるそうです。このしぐさに関連する妖怪や幽霊にまつわる伝承や、日常空間と異世界との境界的役割を示唆する俗称などが多数残されているようです。

妖怪を見る

日本各地の海の民俗研究を行っていた関山守彌は『日本の海の幽霊・妖怪』で、長崎県五島列島の漁師から聞いた話として、股の間から船を見ると、その船が幽霊船かどうかが判別できるという伝承を紹介しています。こうした幽霊船の見分け方は屋代島(周防大島)、奄美大島など各地で伝承として漁師の間で広く知られた手法でした。また、幽霊船に限らず、人を化かそうとする物の怪を見分ける対処法のひとつとして、股のぞきは有効な対処法と見られていたそうです。

その他、江戸後期の呪術書『船中の難を免かるる法』では、乗船する船の運航吉凶を占う方法として、股のぞきが紹介されています。


未来を見る

中村和三郎は、新潟県民俗学会『高志路』に「股かがみをすることで子供には次に生まれる赤ん坊の姿が見える」と書いています。そして青森県、秋田県、新潟県などの各地に、幼児が行う股のぞきは、次の子供が生まれる前兆であるという伝承が伝えられています。

異国・異界を見る

堀麦水の『三州奇談』などに、この世ならざる異界の風景を想像したり、遠く離れた異国の情景を見たりする手法として、富山県唐島の股のぞきが紹介されています。

錯覚の効果で股のぞきで見える風景が、いつもとは異なる感覚を生じされるので、このような伝承が生まれたのかもしれませんね。

 

 

 


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