観音 三十三身/三十三観音とは? 変化(へんげ)や応現(おうげん)とは?三十三観音一覧!

観音 三十三身/三十三観音とは、何でしょうか?

神奈川県鎌倉市長谷にある長谷寺境内にある観音ミュージアムで、観音三十三応現身(かんのんさんじゅうさんおうげんしん/Thirty-three avatars of Kannon)を観ることができます。この観音三十三応現身をもとに、観音 三十三身/三十三観音についてひも解いていきましょう!

観音三十三身/三十三観音とは?

観音菩薩(かんのんぼさつ)は、人々がこの世で苦しんでいる声を聞き、色々な姿に変身して救いの手を差し伸べてくれることから「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」や「観自在菩薩(かんじざいぼさつ)」と呼ばれます。『観音経(かんのんぎょう)』などの経典には、33の姿に変身できるという記述があります。ベーシックな観音様は「聖観音(しょうかんのん)」と呼ばれるそうです。

観音 変化(へんげ)/応現(おうげん)とは?

観音菩薩に限ったものではなく、仏や菩薩が人々の要求に応じた姿で現れる(肉体を伴って出現する)ことを変化(へんげ)や応現(おうげん)といいます。


観音三十三応現身 – 鎌倉 長谷寺

観音菩薩の場合応現は33通りあるということが、法華経その他の経典に記載されているのですが、鎌倉の長谷寺 観音ミュージアムにある、ある程度の大きさがあり、彩色が丁寧なものが33体ある立像は珍しいと言えます。この観音三十三応現身(かんのんさんじゅうさんおうげんしん)で三十三観音観音を堪能していきましょう!

観音三十三応現身は、室町時代の作と考えられており、江戸時代の記録によると、室町幕府8代将軍足利義政(あしかがよしまさ/1436-1490)が造像(ぞうぞう)に関わっているようです。

室町幕府の将軍は、足利尊氏(あしかがたかうじ/1305-1358)の頃まで遡って考えると、本来鎌倉に拠点を置くべき武士の棟梁だったのですが、足利尊氏はおそらく戦乱続きで鎌倉を留守にしがちで京都に居ついてしまったのが室町政権ですので、足利義政あたりになるとほとんど関東には手を付けられていない状態だったと考えられます。しかし鎌倉の長谷寺の現在の正式名称は、「海光山(かいこうざん)慈照院(じしょういん)長谷寺」であり、足利義政の法名が慈照院(じしょういん)であり、足利義政自身が長谷寺(鎌倉)に関心を持っていたかはわかりませんが、長谷寺(鎌倉)側は、足利義政は檀那(だんな)であると考えていた可能性はあります。


観音三十三応現身の特徴

鎌倉 長谷寺の観音ミュージアムの観音三十三応現身の、裸形像(らぎょうぞう)はインド風の着衣形式で、俗人の姿の像は中国風の服装が多くなっています。

・迦楼羅身(かるらしん):本来は翼があるのですが、肩の部分の部品が失われてしまったため、どのように翼がついていたか現在もわかっておらず、翼部分は展示されていません。しかし翼が無いことで、中世の後期の頃からよく使用される技法「箱組(はこぐ)み」の様子がよく見えます。なお、南北朝 室町時代の院派仏師は、箱組みの技法をよく使っています。

・阿修羅身(あしゅらしん):左右の顔にも玉眼(ぎょくがん)が使われており、かなり凝った造りといえます。



三十三観音一覧!

1.仏身(ぶっしん):三聖身
2.辟支仏身(びゃくしぶつしん):三聖身 – 師匠などを持たず独力で悟りを得た人
3.声聞身(しょうもんしん):三聖身 – 仏の声を聞いて悟った人
4.梵王身(ぼんおうしん):六種天身 – 欲界(貪り、瞋(いか)り、痴(おろかさ)の 三毒に侵されている世界)を離れた聖者
5.帝釈身(たいしゃくしん):六種天身 – 仏教の十善を護りその教えを広める神(インドラ神)
6.自在天身(じざいてんしん):六種天身 – 欲界の魔王(元々シバ神)
7.大自在天身(だいじざいてんしん):六種天身 – 欲界の大魔王(元々シバ神)
8.天大将軍身(てんだいしょうぐんしん):六種天身 – 地上の正義の象徴
9.毘沙門身(びしゃもんしん):六種天身 – 多門天ともいい、四天王の一つ(北方を守護)
10.小王身(しょうおうしん):五種人身 – 人間界の王様


11.長者身(ちょうじゃしん):五種人身 – お金持ちの男性(夫)
12.居士身(こじしん):五種人身 – 在家の男性(夫)
13.宰官身(さいかんしん):五種人身 – 公務員(夫)
14.婆羅門身(ばらもんしん):五種人身 – 最高の僧侶階級を指し、ヒンズー教の祭祀をおこなう僧侶
15.比丘身(びくしん):四衆身(ししゅうしん) – 男僧
16.比丘尼身(びくにしん):四衆身 – 尼僧
17.優婆塞身(うばそくしん):四衆身 – 一般男性
18.優婆夷身(うばいしん):四衆身 – 一般女性
19.長者婦女身(ちょうじゃぶにょしん):四種婦女 – お金持ちの妻
20.居士婦女身(こじぶにょしん):四種婦女 – 在家の人の妻
21.宰官婦女身(さいかんぶにょしん):四種婦女 – 公務員の妻
22.婆羅門婦女身(ばらもんぶにょしん):四種婦女 -僧侶の妻
23.童男身(どうなんしん):童男童女二身 – 少年
24.童女身(どうにょしん):童男童女二身 – 少女
25.天身(てんしん):人非人八部身 – 超人的な鬼神
26.龍身(りゅうしん):人非人八部身 – 竜王、竜神
27.夜叉身(やしゃしん):人非人八部身 – 空中を飛行し、すべての善行を妨害する悪神
28.乾闥婆身(けんだっぱしん):人非人八部身 – 天上の音楽師であり、「阿修羅」は闘争を好む悪神
29.阿修羅身(あしゅらしん):人非人八部身 – 闘争を好む悪神
30.迦楼羅身(かるらしん):人非人八部身 – 金翅鳥(こんじちょう)とも言い、竜を食べるという巨大な鳥


31.緊那羅身(きんならしん):人非人八部身 – 半人半獣大蛇、蛇神をもつ歌神のこと
32.「摩候羅迦」は大蛇、蛇神のこと
33.執金剛身(しゅうこんごうしん):人非人八部身 – 仁王様。金剛とはそのような強固堅牢な意志を意味し、その金剛の杵(きね)を手に持って悪人どもが寺へ入るのを防いでいる



観音三十三応現身それぞれの御利益とは?

実は、33応現身の名前が経典に羅列してあるだけで、特定の性格や、ご利益が経典に出てこないので、わからないのだそうです。あえて言うならば、観音菩薩の代受苦(だいじゅく)、すなわち苦しみをその人に代わって受けますというご利益とのことです。

「実はあの時助けてくれた女性が~」という場合の、「女性」が観音菩薩が応現した姿ということのようです。


千手観音像と観音三十三応現身

光背(こうはい)とよばれる千手観音像の仏様の背後多くの仏様のお姿がみえます。こちらの仏様が観音三十三応現身です。千手観音の腕などについては、下記リンクで詳しくひも解いています!

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