祇園祭の山鉾の懸装品のタペストリーは、徳川家から松坂屋と三井財閥が入手したものだった!?

祇園祭の山鉾の懸装品(けそうひん)は、数百年前にブリュッセルで製作され、徳川家にもたらされましたことまでわかりました。今回は、徳川家のタペストリーが、なぜ町衆の手に渡ったのかについてひも解いていきましょう。

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徳川家の宝であるタペストリーが、松坂屋(の前身)に渡ったのか?

徳川林政史研究所に、江戸時代後期の尾張徳川家の詳細が記された文書に、嘉永6年5月名古屋城の庭園で宴が催されたという記録が残されています。招かれたのは徳川家に多額の献金をした商人たちで、その中に松坂屋の前身 伊藤呉服店の伊藤家当主 伊藤次郎左衛門の名前があります。この文書で拝領品といって、尾張藩から献金した人達に下されものがあり、伊藤次郎左衛門はお掛物(掛軸)を献上に対しての見返りとしてもらったことがわかります。伊藤家は多額の献金の見返りとしてタペストリーの1枚を手に入れた可能性が考えられます。

祇園祭の山鉾の懸装品のタペストリーも、徳川家からの拝領品として町衆の手に渡ったと考えられます。


徳川家の宝であるタペストリーを入手した、別の超有名な豪商とは?

5枚連作のうち最後に1枚は、近江商人の町滋賀県大津にあります。大津祭上京町月宮会には、タペストリーの入手先の記録(確かに売り渡したという書付、証文)が残っており、これには上京町が、豪商三井本店(ほんだな)から銀八貫六百目で購入した旨記載されています。三井本店とは、当時京都に本店を構えており、のちに三井財閥となる豪商三井家で、江戸時代呉服(三井越後屋呉服店)と両替商で莫大な財産を築きました。

三井家も大名や幕府の要職にある者達に、多額の金を貸し付けていた記録が三井文庫に残っています。その中でも最も莫大な金を貸ていたのが、紀州徳川家でその額は34万4,837両(今の価値で200億円以)で、紀州徳川家の財政を支えるほどの額です。そして三井家は徳川家や大名への貸付が55万両ほどになったそうです。

京都商人は、金があるだけでは周りの人に認めてもらえず、目利き力も必要でこれがないと尊敬してもらえないのだそうです。呉服商を営むのであれば、なおさらだったのでしょうね。目利き力がなければ、商売成り立たない気がします。

財政の苦しい徳川家や大名に、莫大な金を貸していた豪商伊藤家と三井家は、2つの家は祇園祭の中心地新町通を挟んで向き合ってありました。

借金の謝礼として入手した徳川家のタペストリーが、祇園祭を飾ることになった可能性が高いと考えられます。そして、祇園祭は、各豪商が自慢の目利きで集めた宝が披露される、華やかな場となったのかもしれませんね。いまでいう広告の一種でしょうか。

そして京都の豪商の、新しいもの、未知の物への旺盛な好奇心、新しいものを開発しようという心意気は、現在の服飾有名デザイナー(パリコレ、NYコレクション、ロンドンコレクション)にも通じるところがあるように思います。


記録が残されていないことには、粋な理由がある!?

祇園祭の山鉾の懸装品研究の第一人者、祇園祭山鉾連合会 理事長吉田幸次郎さんは、祇園祭の山鉾の懸装品タペストリーの記録が残されていないのは、京都の豪商独特の気遣いと美学ではないかと言います。「武士は食わねど高楊枝」という言葉があるように、武家がお金に困って、宝物を町民に買ってもらって、何とかしたというのが知れ渡ると、武家にとって致命的な恥となります。

相手様に迷惑をかけるようなことはしてはならないというのが、京都で住まい続ける人達の基本的な物の考え方ですので、相手様に恥をかかせてはいけないという配慮が働いていると考えられます。よって、記録は消えてしまったのではなく、あえて記録を残さなかったと考えられます。

「京都の祇園祭の晴れ晴れとした状況は日本の中で一番ハレな場、どこへ持っていったら一番ハレるかを知っている人たちが、道筋を消して京都に持ってきた。と吉田さんは言います。

豪商たちは、集めた美術品を年に一度、祇園祭で惜しげもなく披露し、人々の目を楽しませてきたのですね。

次回は、世界が注目する祇園祭の山鉾の謎の絨毯について、ひも解いていきます!


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