海に囲まれ山が多い日本は、世界有数の「橋」大国なのです。みる者を圧倒する全長100m以上の巨大橋は日本国内に1万5000以上もあります!
日本で一番ベーシックな形は、橋脚(きょうきゃく)と呼ばれる柱で橋桁(はしげた)を支える桁橋(けたばし)タイプで、日本の端の75%が桁橋なのだそうです。海に囲まれ切り立った山も多い日本では、地理的条件に合わせ様々な形があります。
吊り橋タイプ:高く伸ばした主塔(しゅとう)という柱からケーブルを引っ張る力で橋桁を支え、少ない橋脚で長い距離の橋をかけることができます。
アーチ橋(きょう)タイプ:主塔を建てることなく、弓なりのアーチ構造で橋桁の重さを支えます。
もちろんどの橋も簡単にはつくれるわけではなく、それぞれに想像を絶するドラマがあるのです!日本は海に囲まれた島国なうえに山も多い、そんな複雑で狭い国土の中に海にはタンカー、空には飛行機、さらには電車、自動車など様々な乗り物が行き交(か)うことから、橋をかけるにもハードルがいっぱいあるのです。
橋に関する壮想像を絶するドラマをひも解いていきましょう!
東京ゲートブリッジ:巨大都市・東京は上も下も難関だらけ!建造不可能と言われた
2012年に開通した東京ゲートブリッジ(橋桁54.6m・柱の間440m)は、そのフォルムから恐竜橋ともよばれ、ライトアップされたその美しさは海外からも絶賛されています。
建造の問題①大型船の往来により一般的な桁橋タイプは難しい
長さが2,600m以上あるうえ、大型の船がたくさん通るため橋桁の高さを高くする必要があり、柱と柱の間を400m近くとる必要がありました。そのため桁橋タイプの橋は、間隔を取るために橋脚を減らすと2,600m以上もある桁橋の重量を支えることができないので、一般的な桁橋タイプを採用することはできません。
その場合、明石海峡大橋のような吊り橋タイプにするのが一般的なのですが、ここでさらに問題が!
建造の問題②航空法により高い主塔が建てられず吊り橋タイプは難しい
この場所は羽田空港の飛行ルートの下になるため、高さ制限があり高い主塔を建てることはできず、吊り橋タイプにすることもできなかったのです。
東京タワーやスカイツリーにも採用されている「トラス構造」で桁橋を軽量化し、橋桁にかかる重さを分散させることにしたのですが、またまた新たな問題が発生!
構造の問題③全面「トラス構造」だと旅客機に送られる誘導電波を乱反射させてしまう
全面を「トラス構造」にすると、羽田空港から旅客機に送られる誘導電波を乱反射させてしまうため、桁橋をベースに「トラス構造」部分を必要最低限に抑えた「ハイブリッド構造」にしたのです。東京ゲートブリッジの映えデザインは、様々な構造の問題を乗り越えるためにたどり着いた究極の構造だったのですね。
タイムリミット35時間の極限工事
橋桁と橋脚の接続に使われたボルトは全部で1万2,000本。しかしこのボルトを締める作業のために海を通行止めにできるのは35時間が限界でした。しかし不可能を可能にすべく職人さん達は夜を徹して1万2,000本のボルトを打ちまくり、見事東京ゲートブリッジが完成したのです。
両端から橋を組み立てられない!
東京ゲートブリッジは橋桁が長いので両側から張り出して架けようとすると、計算上重さに耐えきれません。そこで橋桁をクレーンで吊りながら、空中でつなぎ合わせる方法で組み立てたのです。この組み立て方は世界で類をみない画期的な方法です。
瀬戸内海の自然を攻略せよ!世界最大級の”吊り橋”明石海峡大橋(あかしかいきょうおおはし)
神戸市と淡路市とを結ぶ明石海峡大橋は、全長3911mで世界最大級のつり橋で、総工費は約6,000億円!
明石海峡は、海外の大型タンカーをはじめ1日1,500もの船が行き来する国際航路であることから、たくさんの橋脚を設置できないということで、吊り橋が採用されました。
明石海峡大橋の2つの大きな敵がありました。
瀬戸内海の潮の流れ
明石海峡の潮の流れはとても速く、しかも1日にしかも4回も変わるほど複雑です。ここに巨大な主塔を建てるためには海の底のしっかりとした土台を作ることが必要不可欠だったのですが、海底は急な潮の流れですり鉢状の地形になっており、こうした場所に構造物を置くと、洗堀(せんくつ)という(水の流れや波の影響により、海底などの土砂が洗い流される)現象が起きて土台の周辺の土砂が流され傾いてしまうそうです。そこで洗堀を防ぐために、まず海底の地盤を20m以上掘り下げて、甲子園球場とほぼ同じ広さ直径110mの平地を作り,そしてそこに直径80m、高さ70mにもなるコンクリートの筒を沈め、その周りに合計1トンにもなる石を積み上げて、それをコンクリートで塗り固めて丈夫な土台を作ったのです。
海の底をつくりかえるトコロから始めたのです!土台はもはやちょっとした島ですね。
台風による横風
吊り橋は、少ない柱で長い橋が架けられるメリットがある反面、風による揺れに弱いデメリットがあり、過去海外では横風にあおられて橋が崩壊してしまうという事故(1940年アメリカのタコマローズ橋)もありました。特に明石海峡がある地域は、台風も多く風対策は必須だったのです。
そこで風速78mまで耐えられる構造にするため、1/100の精巧な模型を作り強風をあてる強風実験を繰り返し、最適な構造を模索しました。その結果橋桁を箱型ではなく風通しの良い形状を採用したことで、風にも強い橋が完成しました。
明石海峡に橋を架けるのは大変なプロジェクトだったのですね。
1万5,000人の交通を止めるな!極限作業の広島空港大橋
山間部をズドーンと貫くさまが圧巻な広島空港大橋は、長さ800mのアーチ橋です。橋の真ん中の部分の下には、この地域の人達の交通のかなめ、JR山陽本線の線路と県道が通っており、その一日あたりの利用者数は平日で約1万5,000人以上です。地域のライフラインの列車や車を通行止めするわけにはいなかないので、橋脚を必要としないアーチ橋が採用されたそうです。その下に列車や車が往来する中、広島空港大橋は建造され、ネジ1本落とすことのできないため、かなり大変な作業となったそうです。当時日本最大級のケーブルクレーンを使って、パーツを吊り上げて運搬し、左右からズンズン組み上げていきました。作業中に下を通る線路や道路にネジ1本落とすことがないよう、油圧ジャッキで移動する防護網(ぼうごもう)を設置しながら組み上げは行われました。
広島空港大橋は2011年に開通し、着工からかかった年月はなんと14年!
その他 話題の絶景巨大橋
・江島(えしま)大橋(鳥取県-島根県):急勾配(きゅうこうばい)がSNSで話題になっています。
・池間(いけま)大橋(沖縄県・宮古島):エメラルドグリーンの海に浮かぶ橋
・三島スカイウォーク(静岡県):富士山の絶景が楽しめる歩行者専用のものとしては、日本最長のつり橋
豆知識 – 橋の入り口・出口
日本のあらゆる橋には入り口と出口が設定されているってご存じでしたか?全ての橋に当てはまるわけではないのですが、実はその入り口と出口には見分け方があるのです。
橋の欄干(らんかん)などにある橋の名前が書かれた橋名板(きょうめいばん)に、入口は橋の名前が漢字で書かれ、出口にはひらがなで書き分けられていることが多いのだそうです。
大正時代には、橋の入り口・出口が定められていたそうなのですが、昭和36年に当時の建設省により入り口に橋の名前を漢字で表記し、出口にひらがなで表記するという基準が定められました。その後昭和47年にこの基準が廃止されてからも、これにならった表記をする橋が多いのだそうです。
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